




ただの腰痛だと思っていたら、実は骨折していたということは往々にしてあります。骨折と聞くと骨が2つに折れることを想像する方が多いかと思いますが、骨粗しょう症による背骨(椎体)の骨折は、骨が自分自身の体重でつぶれることで起こります(圧迫骨折)。また、骨が折れているのであれば痛くて動けないはず、と思われるかもしれませんが、椎体骨折の場合、全く痛くないという方が多いのが特徴です。そのため、本人が気付かずに骨折が進んでいることがよくあります。

![[図1][図2]](../shared/images/contents/doc_04_image1.jpg)
当院に来院された、慢性的な腰痛を持つ70代の女性をご紹介します。この方は、はりやマッサージを受けておられましたが、特に転んだとか大けがをしたということはありませんでした。腰のレントゲン写真を見てみると(図1)、第2腰椎(L2)が来院の原因となった新しい骨折で、過去に第1腰椎(L1)を骨折していたことがわかりました。また、胸のレントゲンを見ると、さらに2ヵ所の骨折が確認できました(図2)。つまり、今回の4回目の骨折でようやく痛みを感じ、整形外科を受診されたのです。

では次に、膝の痛みを訴えていた別の70代女性患者さんのレントゲン写真を見てみましょう。第4腰椎(L4)と第5腰椎(L5)の骨がずれています(図3:左)。「腰椎すべり症」という病気です。ただ、このときには1つも骨折がありませんでした。ところが、1年半後、腰が痛いと再来院されたときには、L4とL2および第12胸椎(Th12)が圧迫骨折していて、L3が新たに骨折していました(図3:右)。つまり、わずか1年半の間に4ヵ所も骨折していたのです。膝の痛みの方を深刻に思っていたことと、慢性的に腰痛があったことで、「痛いのは仕方がない」と思って、医師に伝えていなかったようです。
![[図3]](../shared/images/contents/doc_04_image2.jpg)


骨粗しょう症により椎体骨折が起こると、腰がエビのように曲がり、容姿が変わってきます。腰が曲がると、食べ物がつかえたり、長く歩けなくなったりして、最終的に寝たきりにつながります。また、骨折は死亡率にも関係するという報告があります。日本人の平均寿命は女性で86歳、男性は79歳といわれていますが、女性であっても、もし背骨が1つ骨折すれば、男性の平均寿命とほぼ同じになり、股関節の骨が骨折すれば、男性の平均寿命より短くなってしまいます。そして、男性で股関節を骨折すると、10年後にはほとんどの方が亡くなってしまうなど、高齢者の骨折は寿命にも大きく関係する非常に注意が必要な病気なのです。

骨粗しょう症は、女性では、閉経後の50代から始まります。50〜60歳頃に骨折する場所で最も頻度が高いのが手首の骨折です。その場合「自分は骨粗しょう症だ」と考えた方が良いと思います。通常、手首が骨折して、ほとんど骨のズレがない場合、ギプスで固定して治療します。しかし、骨粗しょう症の方は骨がスカスカなので、骨が付くうちにどんどん骨が縮んでしまいます。すると、折れた方の骨が短くなり手首の形が変わってしまうことがあります。そして、握力がなくなって、例えばビンの蓋が開けられないといった不具合が生じる場合があります。


患者さんの中には「血圧の薬など、たくさん薬を飲んでいるので、骨の薬は飲みたくない」とおっしゃる方もいます。しかし、75歳以上の寝たきりの原因を見ると、脳卒中などの脳血管障害よりも、骨折や関節の病気が原因で寝たきりになることの方が多いのです。そのため、75歳以上であれば、自分の骨の状態についてもっと注意してほしいと思います。そして、骨粗しょう症であれば、早めに治療することが重要です。
現在、日本整形外科学会では、急速な高齢化に備え、寝たきりを防ぐ目的で「ロコモチャレンジ」という啓発活動を行っています。この活動では運動することや歩くことの重要性を訴えています。寝たきりを防ぐには、しっかり歩いて、しっかり治療することがとても重要なのです。

病 院 名 | 佐藤整形外科 |
郵便番号 | 〒134-0084 |
住 所 | 東京都江戸川区東葛西6-1-17 |
電話番号 | 03-5658-5711 |